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1.自閉症スペクトラムってなんでしょう。
児童精神科の外来では、2-3歳の子どもさんをおもに発達の問題の相談を受け、診断をつけるということが仕事のひとつです。
そんなとき、
「自閉症スペクトラムです。」
「え、うちの子は自閉症なんですか」
というコミュニケーションにならない会話を患者さんのお母様としてしまい反省します。
もっと、情報を共有しておかなければ、と思い、ここに自閉症スペクトラムのことを記します。
なぜ自閉症スペクトラムという言葉を精神科医がつかうようになったかというと2013年にアメリカ精神医学会に診断基準(DSM)が改訂されたからです。DSM-5
になりました。それまでは、DSM-IV でした。
みなさんがよく御存知の自閉症やアスペルガーという診断名は、DSM-IV にはありましたが、DSM-5 ではなくなってしまったのです。
えっと思われるかもしれません。でも、高機能自閉症とアスペルガーの違いは、臨床理論の体系では理解できるけれども、実際の症例の前にいくと迷うしかないということは、少なからずあったのです。ですから、アメリカ精神医学会のいうことをそのまま受け入れているわけではなく、やはり、新しい診断基準をつかおうと思うわけです。
DSM は、診断名は、グループごとに章にまとめられています。
DSM-IV では、
広汎性発達障害という章に、
自閉症
アスペルガー
・
・
広汎性発達障害のその他に特定されないもの
というたくさんの診断名がありました。
DSM-5 では、
自閉症スペクトラムという章に
自閉症スペクトラム
というひとつの診断名だけです。
では、自閉症スペクトラムというのは、何も言ってないではないかということになります。自閉症スペクトラムというのは、自閉症圏の特徴は、さまざまなものがあるのではない、ひとつの連続体すなわちスペクトラムだという考えになったのです。ですから、自閉症スペクトラムと診断すれば、重症度をしめさなくてはなりません。重症度の基準は、最初にカナーによって報告された典型的な自閉症を100とすれば、アスペルガーは50くらいと考えればいいでしょう。自閉症スペクトラムといわれれば、カナーのタイプの自閉症も入ります。しかし、有病率から推測すれば、カナーのタイプは、1万人にひとり、自閉症スペクトラムは68人にひとりといわれていますから、重症の自閉症を思い浮かべることはないのです。お母様方におねがいします。どこかの児童精神科の外来で、医者から診断を言われたら、
「自閉症スペクトラムです」
「どれくらい重症ですか」
と問い返してください。
2.自閉症スペクトラムの診断基準
DSM-IV の自閉症の診断基準の3つ組は有名でした。
社会性
言語
くりかえし、こだわり
DSM-5 の自閉症スペクトラムの診断基準は2つ組になりました。
社会的コミュニケーション
くりかえし、こだわり
どうしてこうなったかというと、症状を変数に因子分析した結果だと思います。
世界中の多くの研究者が自閉症圏の症例を対象に症状を研究し、社会性と言語の症状は、別の因子に分けることが不自然だったということです。そういう研究結果が積み重なって、もう、高機能自閉症とアスペルガーを分けることがなくなってきていた。それをDSM-5
に反映させたということでしょう。
さて、社会的コミュニケーションとは、
1、相互の対人的-情緒的関係のなさ
2、非言語的コミュニケーション行動を用いることのなさ
3、人間関係を発展させ、維持し、それを理解することのなさ
とされています。
ここで、会話する能力といった言語についての記載がないのは、男の子より女の子の方がおしゃべりは得意であろうし、会話は年齢を重ねると発達していくだろうし、また、知能や言語能力といった認知力に関連するところが大きい、自閉症の中核症状とは言えないのではないかという考えからでしょう。
1.人と対したときの関係性、喜びの共有、2.表情や身振りでのコミュニケーション、そして3.人間関係の発展と続くところが、自閉症スペクトラムの診断には重要なところなのです。
医者が、幼児が母親と対しているときに観察しているのは、視線の合わせ方と興味のあるものに母親の視線を誘おうとする指さしです。いちばん愛着のある相手に共感を求めようとする表情や身振り、愛着関係の安定とそのことへの幼児の満足の様子、それさえ観察できれば、これは自閉症スぺクトラムではない、少なくとも重症ではない、と胸をなでおろすのです。
ここが、お母様方が、うちの子が言葉が遅いと心配されているのとは、視点の違うところです。
この幼児のもつ共感的指さしとは、たとえば、こういうものです。
暮れなずむ歩道を1歳のよちよち歩きの男の子がお母さんと手をひいて歩いていく。疲れたのか、男の子はお母さんのスカートを引っ張ってお母さんの顔を見上げて両手を広げて抱っこをせがむ。お母さんが抱っこをして歩くと、バスが通った。「あー」とうれしそうに声をあげて、指さしして男の子はバスをお母さんに指し示す。お母さんもバスを見つめ「まあ、バスね、パパ乗っているかしらね」。男の子は、バスを見てくれているお母さんの顔を見て、きゃっきゃと声をあげ全身で喜ぶ。パパが乗っているかもしれないバス、いつも出かけるときに乗るバス。ぼくの好きな赤白のバス。いつものバスが通った。
3.子どもの敏感さ
「この子は予期しないことが起こったときに、とても不安になるんです」
こういうふうにお母様に御相談を受けることは少なくありません。新しい場所にとても不安、いつもと違う道をとても嫌がる、驚いたような怒ったような声色に泣き出す、といったことでしょうか。
自閉症スペクトラムの特徴をもつ子どもたちは、相手の表情や身振りから心理的感情的コミュニケーションがとりにくいことです。それと同時に、自分の表情や身振りを相手がどのように感じるかということも思い至ることがむずかしいし、自分の表情や動作で周囲に自分の感情を知らせようとする思いをもつこともむずかしいのです。
自閉症スペクトラムに限らず、予期せぬ不安を繰り返し感情的に体験することは、避けることが必要です。
自閉症スペクトラムの特徴をもつ子どもたちは、泣き出す前に、不安を少し予測したときに、お母様のスカートをつかんだり、その場から動かなくなったりしているかもしれません。そういうときに、定型発達の子どもならば、たとえ言葉で言わなくとも、お母様の顔を覗き込んだり、表情を不安そうにかえたり、安心できそうな人の手を強く握ったり、不安という感情をお母様に訴えよう、わかってもらおうとするでしょう。不安という感情も表情や身振りでお母様に伝えることがむずかしいので、自閉症スペクトラムの特徴をもつ子どもたちは、訴えるときには、大きな不安になってしまい、どうしようもないほどの興奮、泣きじゃくりとなってしまいます。
では、どうするのか、ということです。
子どもが、立ちつくしているとき、その視線の先をみて、話しかけることです。返事を求めるのでなく、安心するように。
No I won't be afraid
Just as long as you stand, stand by me
2018英国のロイヤルウェディングで、スタンド・バイ・ミーがゴスペルで歌われました。感動しました。
これは、愛の歌かもしれません。でも、あなたの横にいて、あなたが不安でないなら、これは母としての理想かもしれません。
でも、ひとりで、力強く生きていくための歌かもしれません。
子どもたちが、力強く生きていってほしい。そう思います。
4.自閉症スペクトラムの予後
「この子は、ずっと、このままなのですか」
お母様によく訊かれる質問です。絶対、そんなことはありません。子どもは、必ず発達します。
自閉症スペクトラムの診断自体が、そんなに恒常的な症状を前提にしたものではありません。
ベン・アフレックという俳優のアクション映画、日本の配給会社は「コンサルタント」という題名にしましたが、アメリカの原題は会計士です。数字に強い自閉症スペクトラムの会計士が知識もあるからコンサルトもするという主人公をベン・アフレックが演じています。クールで几帳面という特徴、生活のパターンを変えないという特徴、そういう特徴を描いてはいますが、主人公は自分の特徴を生かされて育った。そういうように子どものもつ特徴を生かしていくということは自閉症スペクトラムに限らず、どの児にも必要だと思うのです。
いらいらした気分とかんしゃく
アメリカ精神医学会の診断基準(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)がDSM-IVからDSM-5になり、児童精神医学にとってのいちばんの診断基準の変化は、自閉症スペクトラムです。自閉症スペクトラムについては、DSM-5に著される以前よりいわれている概念です。
他には、新しい診断概念が、重篤気分調節症(Disruptive Mood Dysregulation Disorder; DMDD)が、抑うつ障害群の下位分類として追加されています。DMDDは、ほとんどは、注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity
disorder; ADHD)に伴うもので、一部は、自閉症スペクトラムにも伴います。
DMDDは、子どもにもちいられる状態で、激しいイライラや怒りの気分で、激しいかんしゃく発作が頻回に起こる状態です。DMDDの症状は、気分屋の子どもの範囲を超えているものです。
重篤気分調節症(Disruptive Mood Dysregulation Disorder; DMDD)とは、
1.激しいかんしゃくの噴出、平均して週に3回以上おこる。
2.ほぼ毎日、ほとんど一日中、イライラや怒りの気分。
3.かんしゃくの噴出は発達水準に相応しない。
4.子どもは、少なくとも6歳以上でなければならない。
5.症状は、年齢10歳前に開始。
6. 子供が複数の場所で(例えば、家庭、学校および/または友人と)障害を持っている。
7.子供が複数の場所で(例えば、家庭、学校および/または友人と)、他者からも観察可能である。
です。
症状としては、10歳以前に始まり、イライラや怒りの気分は、一日のほとんどで、ほとんど毎日です。激しいかんしゃく発作(言語的もしくは行動的)は、平均して週に3回以上起こり、その場の状況や発達水準に相応しない。子供がひとつ以上の場所で(例えば、家庭、学校、友人関係)イライラした気分による障害がある。DMDD, と診断するためには、12か月もしくはそれ以上の期間にこれらの症状が続いていないと診断しない。
DMDD は、これから研究される疾患概念で、今まで、ADHDに伴う気分の問題は、これまで、さまざまな考えられ方をしてきました。ADHDの症状基準の中に、気分や感情についての症状がありません。しかしDMDDほど困らなくても、かんしゃくやイライラした気分、感情的になりやすい、感情が不安定といった症状は多くのADHDの症状をもつ子どもたちはもっています。
もともと米国において、ADHD と児童の双極性障害の関連について注目され、あまりにも過剰に双極性障害と診断され過ぎるのではないかということで、この DMDD という診断が用いられるようになったと考えられます。
ADHD症状をもつ子どもたちに、行動の問題を併存する診断はあったけれども、気分の不安定さを診断する診断がなく、双極性障害の併存と考えられていた可能性はあります。DMDDは、予後としては、うつ病、不安障害を研究されていくでしょう。かれらは、内心は不安で神経質でものごとをネガティブな方向に衝動的に考える気質があるように思います。
しかし、子どもの双極性障害を考えるときに、ADHDとの関連は否定されるものではないと思います。
子どもの双極性障害の60-90%にADHD が伴うといわれています。AD/HD症状と躁症状の鑑別が容易ではありません。症例ごとに、経過を見て、気分の波があるかどうかということです。ずっとしゃべり続け、動き回り、「さすがに俺だ」と気分がハイであり過ぎる時期と、何もしない時期があるかどうかです。Methylphenidate
は躁を引き起こす可能性があり、双極性障害への治療でADHD症状に効果がみられないときに注意深くもちいることが示唆されます (Liu HY, et.al)
Liu HY, Potter MP, Woodworth KY, Yorks DM, Petty CR, Wozniak JR, Faraone
SV, Biederman J.
Pharmacologic treatments for pediatric bipolar disorder: a review and meta-analysis.
J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2011;50(8):749-62.e39.
AD/HD については、よく知られています。日本語で注意欠如多動症ですが、落ち着きのない子ども、よく動く子どもと捉えられています。多動の目立たない子どもも集中力の問題をもっていることがあります。話しかけても聞いていない、ぼーとしているようにみえる、忘れ物が多い、しなければいけないことを忘れて他のことに気をとられてしまう、やらなければいけないことがいくつかあると混乱してしまっているようにみえる、周囲の人に理解されない、ということで受診されることが多いようです。
子育ての問題として見られることが多く、AD/HDの子どものお母様は、もっときちんとしつけをしなさいと言われて困ってしまっていることがあります。子どもたちを理解して対応していくことが求められます。
AD/HD には、学習障害などがともなうことが知られています。
当クリニックでは、積極的に心理テストや認知テストをおこない、学習障害についても把握し、その子にあった学習方法を提案していきたいと考えています。
ひらがなは清音は何とか読めるが濁音や拗音は難しい、漢字は書けるがひらがなを書くことが難しいなど、困っている状態をお話しください。また、英語のスペルについても努力しても覚えられないということがめずらしいことではありません。
AD/HDの子どもの中には、努力していく課題をこなしていくのが苦手な子どももいます。その子といっしょに勉強していくのは大変かもしれませんが、学習の仕方をお母様が理解していくことで子どもさんに自信が生まれます
AD/HDと双極性障害
AD/HDと双極性障害が伴うことは、広く知られています。
ここでは、子どもの双極性性障害とともに、AD/HDとの関連について記したいと思います。
臨床の中で、双極性障害の可能性を考えさせられる症例に出会うことは少なくありません。10代の子どもの「うつ病」の症例の経過をみていくと、躁状態をみることがあります。それは、うつ状態からすぐであることもありますし、数年から10年以上の後ということもあります。また、注意欠陥多動障害(AD/HD)の子どもの診断をするときに、AD/HD症状だけでなく経過を十分に考慮する必要がりますが、AD/HD症状と躁症状が状態像だけでは鑑別が難しいこともあります。経過が特有な症例は、双極性障害の可能性も考えます。そして、AD/HDと双極性障害は合併することも少なくありません。AD/HDの子どもを経過中に無意欲な時期をみることがあります。症例によっては、うつ気分を語ってくれますが、うつ気分のはっきりしない症例もあります。このような症例の中に、AD/HDの経過中に双極性障害の「うつ状態」のあらわれたと考える子どもたちがいるのではないでしょうか。
子どもの「うつ病」に、抗うつ剤のactivation を中心とした副作用がいわれます。また、子どもの「うつ病」には抗うつ剤の効果については議論があります。外来で、抗うつ剤に効果のない「うつ病」の子どもに出会ったとき、抗うつ剤で
activation のあらわれた「うつ病」の子どもに対応するとき、AD/HD症状のある児に薬物療法をして効果のみられないとき、AD/HDの薬物療法で感情的不安定や攻撃性などの副作用のあらわれたとき、もう一度、かれらの病歴や家族歴を見直すときに、双極性障害の概念が有用であるときがあると考えらます。そのような臨床体験の積み重ねが、子どもへの見通しをもった治療をすることにつながり、適切な薬物療法(適切な時期にできるだけ少量できるだけ短期の薬物の使用)とともに経過を十分にみて、適切な診断につながる可能性があるでしょう。
双極性障害を考えるときは、考えるときは、どんなときでしょうか。
外来で出会った子どもたちが、いらいらした気分の強い「うつ病」、怒りの強い「うつ病」、うつ気分がはっきりしない抑制の強い状態、感情の不安定さ、過眠、過食をともなう「うつ病」、自分が楽しいと思えることには没頭する「うつ病」、激しい自殺企図のような特徴をもっているときに、双極性障害を考える必要があるでしょう。
子どもたちの病歴から双極性障害を考えるときは、うつ病相になる以前の状態が、意欲的に活動していた、何度も「うつ状態」を経験しているけれども普通以上の成果をあげる時期がみられた、うつ病相の間にも一時的に爽快な気分の時期がみられるといったときでしょう。
子どもの躁状態は、次のように経験しています。
子どもの躁状態については、気分の高揚、誇大妄想や観念奔逸はあまり経験したことがなく以下のような不機嫌状態といったことの方が経験しています。子どもたちは、怒りっぽい、いつも怒っている、もしくは自尊心の肥大といった状態のことが多いです。
外来で躁状態を考えさせる言動としては、「僕をいじめた相手が、のうのうと学校に行っているなんて許せない」「恥ずかしい気持ちなんてありません」「自分の思ったことは何でもやります」「先生のおっしゃることはアドバイスとしてきいておきます」「失くしものをよくするようになりました、でも気にしていません」というようなことでしょうか。気分の高揚感、開放感、誇大な言動といったことは、あまり児童外来では経験していません。
いわゆる軽躁状態で、怒りっぽく、自尊心が肥大している。子どもなので、経過をきかないともともと、こういう性格なのか、と見落としてしまいそうなときもあります。いつも、気が弱く、いじめられてばかりいる子だった、怒ることなんてない、穏やかな子だった、急に変わった、眠らないでも平気になった、と家族に経過をきいて、わかるときもあります。
小児期の躁状態は、精神病症状、気分の不安定さ、躁鬱の混合の特徴をもつことが多い(Pavuluri MN, 2004, 2005, McClellan
J, 2007)。小児期の双極うつ病は、怒り、不機嫌を呈し、行動の問題、不安、薬物依存をともないやすいといわれています(Wozniak J,
2004, McClellan J, 2007)。
AD/HDの症例の経過をみていくと、思春期頃から、抑うつ気分のはっきりしない過眠をともなった抑制の状態をみることがあります。AD/HDには、気分のかわりやすさはありますが、それだけでは考えられない気分の波があります。ずっとしゃべり続け、動き回り、「さすがに俺だ」と気分がハイであり過ぎる時期をみることもあります。
気分易変性、いらいらした気分、無謀な行動や攻撃性は双極性障害と考えられています(Geller B et al 2000, 2004, McClellan
J et al 2007)。小児期にあらわれる症状は、うつ状態と多動が多い(Lish JD et al 1994, Perlis RH, 2004,
McClellan J, 2007)。双極性障害は、AD/HDをともなうことが多いといわれています(Tillman R, 2003, McClellan
J, 2007)。
気分の不安定と双極性障害
子どもの気分の不安定さを双極性障害の特徴と考えるのか良いのかどうかについて考える必要があります。気分の不安定さは、境界性人格障害と関連するといわれます(McClellan
JM, 2006, McClellan J, 2007)。慢性の気分や行動の不安定さ、および何時間や何日の単位の気分の変化(落ち着いている時期にも気分の不安定はみられる)は、双極性障害を考えるには議論があります(McClellan
J, 2007)。
成人の双極性障害は、広く捉えられるようになってきている(Baldessarini RJ.2000、Judd LL, Akiskal HS. 2003
)。 軽躁状態を躁状態と考えて、双極II型という概念は定着している。小児については、hypomanie, mixed episode, rapid
cycular といった病態が多い。不安、うつ、多動、気分の不安定さといった症状が、双極性障害の初発症状の可能性も考えられます。
臨床の場で、双極性障害の子どもが、躁症状を主訴にだけクリニックを訪れるわけではありません。いらいらした気分のうつ病、ADHD児が不安が昂じて落ち着かなくなっている、過眠過食のうつ病としてあらわれます。そういうときに、第二世代抗精神病薬を最初にもちいるかどうか考慮します(Potter
MP et al, 2008)。
双極性障害の治療
Lamotrigine が小児の双極性障害抗躁作用、抗うつ作用およびADHD症状の改善についてのデータがあります(Biederman J et
al, 2010, Liu HY et al 2011)。
Aripiprazole, Olanzapine, Quetiapine, Risperidone の小児の双極性障害への効果は確認されていて、FDAは認可しています(Liu
HY et al 2011)。小児の躁状態については、気分安定剤よりも第2世代抗精神病薬が効果があります。しかし、体重増加、眠気は小児では気をつける必要があります(Correll
CU et al, 2010)。
Dysphoric mania は若い世代に多く、Lithium より Anticonvulsant が効果があるだろうといわれています(McElroy
SL et al, 1992)。
さて、双極性障害の「うつ」について、抗うつ剤をつかうことは問題があるでしょう。そこで、双極性障害への治療が、「うつ」症状も改善させるかどうか。双極性障害への治療はADHD症状への影響はどうかということが問題として浮かび上がってくる。
うつ症状については、Aripiprazol は、双極性障害の小児の「うつ」症状のある subgroup の response rate は60%、Risperidone は48%というデータがある(Biederman J et al, 2007, 2005, Liu HY et al, 2011)。4−6歳の小児の双極性障害の「うつ」症状に、 Olanzapine と Risperidone は36%という response rate である(Biederman J et al, 2005, Liu HY et al, 2011)
ADHD症状については、4−6歳の小児の双極性障害のADHD症状に、 Olanzapine 13%と Risperidone 14%という response
rate である(Biederman J et al, 2005, Liu HY et al, 2011)。Aripiprazol は、双極性障害の小児のADHD症状のある
subgroup の response rate は60%、Risperidone は35%というデータがある(Biederman J et
al, 2007, 2005, Liu HY et al, 2011)。しかし、第二世代抗精神病薬は、双極性障害のないADHDにはつかうべきではありません(Liu
HY et al, 2011)。ADHDへの治療は、双極性障害のあるADHD症状に効果がある(Findling RL et al, 2007,
Galanter CA et al, 2003, Carlson GA et al, 2000)といわれますが、Methylphenidate
は躁を引き起こす可能性があり、双極性障害への治療でADHD症状に効果がみられないときに注意深くもちいることが示唆されます(Liu HY et
al, 2011)。
双極性障害は、双極性障害の可能性を知っていないと診断できません。双極性障害は、必ずしも躁状態をみたときに診断するわけではないのです。過剰に診断しすぎてはいけません。もちろんです。しかし、不安をみたときにも、発達障害をみたときにも、可能性として経過の中にあるもの、と考えておくもののひとつであるのです。
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